膝の痛みが長く続くとき、
私たちはつい「膝の中が悪い」と思いがちです。
ところが、実際に身体を観察していくと
痛みは関節の中ではなく、皮膚上に“領域として”存在することがわかります。
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背景
あるアスリートは、サッカーの試合中に転倒し、
膝前十字靭帯断裂の診断を受けました。
膝に力が入らない
歩くと膝が前に“スライド”する感覚
片足立ちが不安定
常に膝まわりに痛みと防御反応がある
一般的には手術や長期リハビリが必要とされるケースです。
しかし、ここで注目すべきは
「痛みの場所はどこか?」
という点でした。
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観察:痛みは“点”ではなく“領域”だった
膝周囲を丁寧に触れていくと、
強く響く中心点があり、
そのまわりに鈍い痛みが広がる帯状の領域が存在していました。
つまり、
(最も痛い中心点)
↓
(その周囲に広がる違和感の層)
↓
(さらに外側の硬さの層)
この全体が ペインポケット(痛みの領域) でした。
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アプローチ:領域全体に対する刺激
従来の“ツボ押し”や“一点刺激”ではなく、
中心から外側へ向かって
“面として広がる領域全体”へアプローチしました。
すると、
過敏化した中心点が徐々に落ち着き
防御収縮していた筋が緩み
荷重時の痛みが段階的に減少
という変化が観察されました。
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セッションごとの変化
回数 歩行時の痛み 膝の安定感 身体の反応
初回 強い痛みあり スライド感強い 片脚荷重が不安定
2回目 痛みが軽減 スライド感が減少 歩幅が自然に戻る
3回目 可動域が広がる 安定感が増す 片脚立位が可能に
4回目 歩行時痛ほぼ消失 スライド感消失 通常歩行が可能に
変化は 一気にではなく、段階的に積み上がったものです。
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この症例が示すこと
痛みは曖昧ではない
身体の表面に“場所”として存在する
その場所は、触れれば誰でも確認できる
見えれば、対処できる
つまり、
> 痛みは「謎」ではなく「観察できる現象」だった。
ということです。
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まとめ
前十字靭帯断裂という重大な損傷であっても
痛みは構造そのものではなく、周囲に形成された“領域”で感じられていた
その領域を 見つけて・整える ことで
身体は本来の動きを取り戻していく
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痛みは“見える”ようになったときから変わり始める。


