痛みとどう向き合えばいいのか
ここまで、痛みについていくつかの視点からお話ししてきました。
痛みは、必ずしも「痛い場所だけ」の問題ではないこと。
検査で異常が見つからなくても、痛みを感じることがあること。
そして、私たちの身体には、本来「回復する力」が備わっていることをお話ししてきました。
では、私たちは痛みとどのように向き合えばよいのでしょうか。
痛みを「我慢するもの」にしない
痛みが出たとき、
「そのうち良くなるだろう」
「年齢のせいだから仕方がない」
「病院で異常なしと言われたから大丈夫」
そう考えて、長い間我慢している方は少なくありません。
もちろん、一時的な疲労や軽い負担であれば、自然に回復することもあります。
しかし、
- 同じ場所が繰り返し痛む
- 朝になると身体が重い
- 長時間座ると痛くなる
- ある動きをすると必ず痛む
- 何もしていないのに違和感が続く
このような状態は、身体からの小さなサインかもしれません。
今回は、具体的な5つの例で考えてみましょう。
具体例① 朝起きたときだけ腰が重い
「朝起きると腰が重い。でも、動いているうちに少し楽になる」
このような経験はないでしょうか。
痛みが一日中続かないため、「まだ大丈夫」と考えてしまいがちです。
しかし、毎朝同じことが繰り返されるのであれば、睡眠中の姿勢、身体の緊張、日中に蓄積した負担など、何らかの要因が関係している可能性があります。
大切なのは、強い痛みになるまで待つのではなく、「なぜ毎朝、同じ場所に違和感が出るのだろう?」と身体の変化に気づくことです。
具体例② 長く座っていると腰やお尻が痛くなる
仕事や車の運転などで、長時間同じ姿勢を続けたあと、
「腰が痛い」
「お尻が重い」
「立ち上がるときにつらい」
という方がいます。
この場合も、痛みが出ている腰やお尻だけを見ればよいとは限りません。
座り方、股関節の動き、太ももの緊張、身体の使い方など、複数の要素が関係している場合があります。
痛みの場所だけではなく、「何をしたあとに痛くなるのか」を見ることも重要なのです。
具体例③ 右側だけ、左側だけ痛む
「いつも右肩だけが痛い」
「左の腰だけが重い」
「片方の膝だけが痛む」
身体の片側だけに症状が続く場合があります。
人間の身体は、完全に左右同じように使われているわけではありません。
仕事の姿勢、スポーツ動作、荷物の持ち方、立ち方など、日常生活の小さな癖が積み重なっていることがあります。
痛い場所を何度も揉んでも繰り返す場合には、なぜ片側だけに負担が集中しているのかという視点も必要です。
具体例④ ある動きをしたときだけ痛い
普段は痛くないのに、
「腕を上げたときだけ肩が痛い」
「階段を降りるときだけ膝が痛い」
「身体をひねったときだけ腰が痛い」
という場合があります。
このようなときには、
- どの角度で痛むのか
- どの動作から痛みが始まるのか
- 動作を変えると痛みも変わるのか
といったことが、身体の状態を知るための重要な情報になります。
「肩が痛い」「膝が痛い」だけではなく、痛みが現れる条件を見ることが大切です。
具体例⑤ 何もしていないのに重い、だるい、違和感がある
これが最も説明しにくい症状かもしれません。
ケガをしたわけでもない。
激しい運動をしたわけでもない。
検査でも大きな異常は見つからない。
それでも、
「重い」
「だるい」
「なんとなく気持ちが悪い」
「ずっと気になる」
という状態があります。
このような症状も、「気のせい」と決めつけるべきではありません。
身体の緊張状態、神経の感受性、睡眠、疲労など、さまざまな要因が関係している可能性があります。
大切なのは、身体が発している変化を無視しないことです。

痛みは一点だけで考えない
痛みや違和感を感じたとき、単に我慢を続けるのではなく、「いつ痛むのか」「どの動きで変化するのか」「痛みはどこまで広がっているのか」など、身体が発しているサインを観察することが大切です。
ここまでの5つの例には共通点があります。
それは、痛みの場所だけを見ていても分からないことがあるということです。
痛みには、
- どこが痛むのか
- いつ痛むのか
- どの動きで痛むのか
- どこまで広がっているのか
- 身体の別の場所に変化がないか
このように、さまざまな視点から身体を見ることが大切だと私は考えています。
「早く気づく」ことが大切
身体は、突然強い痛みを出すとは限りません。
最初は、
「少し変だな」
「ちょっと重いな」
「前と何か違うな」
という小さな変化から始まることがあります。
その小さな変化に気づくことが、身体を守る第一歩です。
痛みは、ただ我慢するものではありません。
身体からの情報として受け止め、なぜ痛むのか、どのように広がっているのか、身体はどのように反応しているのか。
こうした視点から考えることで、これまで見えなかったものが見えてくるかもしれません。
次回はいよいよ最終回です。
第8回では、「痛みをもっと見えるものにできないか?」という、私が臨床と研究を続ける中で考えてきたテーマについてお話しします。
痛みの「強さ」だけではなく、痛みの広がりや身体の変化を見る。
そこには、これからの痛みの評価につながる大切なヒントがあると考えています。
つづく(全8回シリーズ)


